2019.12.27

[パラカヌー/アンプティサッカー]滋賀県カヌー協会/関西セッチエストレーラス 冨岡忠幸

アンプティサッカー日本代表が、今度はパラカヌーで世界を目指す

上肢または下肢に切断障がいのある選手が行うアンプティサッカー。その日本代表としてワールドカップ3大会に出場している冨岡忠幸は、いわばレジェンドだ。

 2017年から始めたパラカヌーでもアンプティサッカーで培った強靭な身体を活かし、わずか2、3回のみの練習で出場した日本選手権で準優勝。「競技用カヤックはバランスを取るのが難しく、初心者はすぐにひっくり返るそうです。でも、自分は最初から自然と乗れてしまった。日本選手権に出たら準優勝してしまって…(笑)」と、冨岡はパラカヌーとの出会いを振り返る。以後、アンプティサッカーとパラカヌーの両方で”世界”を目指す生活がはじまった。

 冨岡は19歳の時に交通事故で左足大腿骨から先の切断を余儀なくされた。 だが、子供の頃から陸上競技やホッケーなどをやってきた根っからのスポーツマン。事故後もサーフィンやスキーなど「楽しそう」と思ったら、やらずにはいられない。アンプティサッカーも「2010年のワールドカップ アルゼンチン大会をテレビで観て、やってみたいと思いました。 で、国内でできる場所を探したら当時は埼玉にしかチームがなかった。遠い。でも、やりたい。月に1回、埼玉に通いました」 という。

 この好奇心と行動力はパラカヌーでも同じ。練習環境が整っている石川県や岐阜県に月1、2回、片道1時間半〜2時間かけて米原市から通っている。移動だけでもハードだが、乗艇練習は多くて1日6時間。距離にすれば15㎞も漕ぐ。限られた時間で乗艇スキルを上げるには、それくらい集中的に自分と向き合う必要があるようだ。
「左の大腿骨から先がないので、身体を左にひねる際に足で踏ん張れない。でも、左のパドリングでは身体をひねらないといけない。そこで考えたのは足を踏ん張るのではなく、逆に引くことで腰をひねる方法。足を押す、引く動きを連続させるとカヤックのバランスを取るのが難しい。その際、アンプティサッカーでの体をひねってシュートを打つ動きが、役立っているような気がしています」

 この技術に磨きをかけ、冨岡は2年でタイムを約27秒も縮めた。今年9月の日本選手権では自己ベストを大きく更新(200m/1分01秒019)。東京パラリンピックもなんとなく視野に入ってきた。
「今は、来年3月の海外派遣選手選考会で52秒台を出せるように身体を鍛えています。52秒が海外派遣の目安ですが、ハードルは高いです。でも、その先に行かないと、東京パラもありません。やるしかないですし、挑戦したいです」

 滋賀唯一のパラカヌー選手の挑戦は、この冬が正念場になる。

冨岡 忠幸

滋賀県カヌー協会/関西セッチエストレーラス

Profile/とみおか・ただゆき。1979年6月6日生まれ、米原市出身。19歳の時に交通事故に遭い、左足大腿骨から先を失う。その後はサーフィンやスキーなどを行い、30歳の頃にアンプティサッカーワールドカップ アルゼンチン大会(2010年)をテレビ観戦。刺激を受け、自らも競技を始める。すぐに頭角を現し、12年には日本代表としてワールドカップに初出場。以後、14年、18年にも出場。また、2017年にパラカヌーと出会い、来年の東京パラリンピック出場を目指している。 174㎝、52㎏。

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