2020.04.11
未来へ。育成で滋賀のバスケットを明るくする。
B.LEAGUE 2019-20 SEASON
滋賀レイクスターズ 未来へ。
立場は違うが想いは一つ
2017年に誕生した滋賀レイクスターズU 15(ユースチーム。中学生が対象)は、2020年度からBリーグユース所属の「U15」と滋賀県のクラブチームとして活動する「U 15Next」の2チーム制を敷く。2月のトライアウトで合格した18人のうち、新中学1年生の早生まれ5人は滋賀国スポのターゲットエイジ強化指定選手としても活動する予定だ。
新6年生も含め、このターゲットエイジ強化指定選手を、これから4年をかけて滋賀レイクスターズと滋賀県バスケットボール協会が強化していく。プロ野球やJリーグなどの他のプロリーグを見渡しても、なかなか珍しいケースだ。 滋賀レイクスターズ育成ディレクター兼U 15ヘッドコーチの根間洋一は「時には指導者同士で衝突する時もあると思う」と、その難しさを口にする。
国スポ少年男子チームを率いる武田大輔監督(彦根翔西館高校教諭)も「プロとアマでは文化が違うので、痛みを伴う時はあるでしょうね」と言う。それでも両者が歩み寄ったのは、本気で滋賀バスケットを強くしたいから。立場は違うが、想いは一つということだ。
育成のノウハウの幅を広げる
では、プロ・アマ協定による最大のメリットはなんだろうか。
根間 「教育者の立場で選手たちと接している先生たちが、どういうアプローチで選手と向き合い、モチベーションを維持しているのか。プロとは違う育成方法に触れることができるのは、我々のメリットだと思います」
武田 「我々もプロのコーチがどういう雰囲気を作り出すのか、すごく興味があります。もちろん、スキルや戦術の部分も学ぶことはたくさんあると思いますし、それらを中学・高校の指導者が吸収し、共有することで滋賀全体のレベルも上がると思います。ところでレイクスの育成では、どんな点に気をつけているのですか」
根間 「大事にしているのは、プロセスです。目標設定も選手たちが考えて決めますし、それを達成する道筋も自分たちで考えます。指導者は彼らの理想が叶うように、いろいろな選択肢を用意しながらサポートをしていきます。というのも、全ての選手がプロになれるわけではないからです。私は中学生の時に全国優勝しましたが、その時のメンバーでプロ選手になれたのは私だけです。プロになれない確率の方が高い中で、どういう目標を立て、どう向き合うかのプロセスを学ぶことは人生において大事だと思っています。その観点から、教育現場にいらっしゃる先生のアプローチ方法を見られるのは、レイクスの育成システムを構築する上で貴重な財産になるのではないかと思っています」
滋賀独自のカルチャーを
具体的には、どんな選手を育てたいのだろうか。彦根翔西館高校男子バスケットボール部の監督でもある武田氏は、日本バスケットボール協会の方針が基本だと話す。
武田 「協会が理想に掲げているのは、NBAで活躍する八村塁選手のようなオールラウンダーです。基本はその方針に合わせて選手を育てようと思っています」
根間 「確かに、それは理想的ですが、滋賀にはそのアプローチは向いていないとも思います」
武田 「その理由はなんでしょうか」
根間 「今年1月にレイクスU 15が全国大会に出場しました。その時に痛感したのは、サイズでは人口の多い他府県には勝てないということです。もちろん、高校で身長が伸びる子もいますが、確実に伸びるという保証はない。ただ、サイズのディスアドバンテージを抱える子でも、バスケットセンスがある子もいますからね」
武田 「その子の強みを伸ばすような指導をした方がいいということでしょうか。そうすれば、根間さんのご出身である沖縄の選手のように、闘争心をむき出しにする選手たちになりますか。滋賀の子はおとなしい印象があります」
根間 「土地柄もありますから、なんとも言えません(笑)。でも、育成ではメンタルの強化も大きなテーマだと思います。レイクスでは昨年からNBAサマーキャンプにU 15所属の選手を派遣したり、Bリーグの試合でロッカールームに入ったり、運営を手伝ったりしながら、モチベーションを高められるように工夫をしています。その中で、高い理想を持つ子はそれに合わせてメンタルも強くなる。滋賀レイクスターズのショーン・デニスHCは〝苦を普通にしよう〞と言った言葉をよく使います。例えば、今まで嫌だなと思っていた練習が、そんなに苦じゃなくなった時、その選手のステージは一つ上がった証拠です。その積み重ねが、選手の成長になり、チームとしてのウイニングカルチャーを生み出すことになります」
武田 「勉強になります(笑)。滋賀独自の育成カルチャーを作ることが、滋賀バスケット界の強化につながるのかもしれません。まだ始まったばかりですし、もっといろんなことを吸収していきたいと思います」
根間 「こちらこそ、日々勉強です。本日は貴重な時間をいただき、ありがとうございました」