2021.09.08
誕生日は1日違い 高め合い、初舞台 福井香澄・井上舞美
東京2020オリンピックの余韻が残る中、8月24日には東京2020パラリンピックが開幕する。滋賀ゆかりの選手は12人。湖国にどんな感動を届けてくれるのか。今、躍動の瞬間(とき)を迎える。
同じリレー種目で代表の座
初のパラリンピック出場(知的障がい者水泳)となる井上舞美(イトマン大津)と福井香澄(滋賀友泳会)は、誕生日が1日違いの同級生。出身も守山市と野洲市と近く、なんとなく育ってきた環境は似ている。
だが、選手としてのパーソナリティは真逆に近い。スタミナがある長距離タイプの井上に対して、福井は短距離スピード型。2021年3月の日本パラ水泳選手権では、井上が100mバタフライと200m個人メドレーで優勝(ともに日本新)し、福井は100m自由形と100m背泳ぎで2冠を達成するなど得意種目も異なる。そして性格は「全く違う」と2人は話す。
井上は「(福井)香澄はお姉さんタイプでしっかりもの」と言い、福井は「(井上)舞美は明るいムードメーカー。でも忘れ物が多い」と話す。
そんな2人が初めてのパラリンピックで、リレーをつなぐ可能性がでてきた。ともに混合4×100mフリーリレーで日本代表に内定しているからだ。
所属選手の井上に加え、今年4月から福井の指導にもあたっているイトマン大津の濱田和哉所長は東京2020大会での2人に期待感を持っている。
「昨年はコロナ禍でほとんどの大会が中止になった。その中で、今年3月の日本パラ100m自由形で福井が1位、井上が2位でフィニッシュ。2人ともよく頑張ったと思いますし、東京2020パラリンピックでは順番が噛み合えば2人がリレーをつなぐ可能性もある。すごいことだと思います」
2人一緒が相乗効果をもたらす
井上と福井が出会ったのは高校1年の時。滋賀県の強化練習会で一緒だったが、その時の印象は2人とも「あまり覚えていない」と言う。それぞれ得意種目が異なるため、気にならなかったのかもしれない。
先述の通り、今も異なるパーソナリティの2人は今まで「ライバルと思ったことはない」という。
高校の頃から2人を見てきた滋賀友泳会の青谷大地コーチも「無意識に刺激は与えていると思いますが、ライバル関係ではない」と認める。むしろ、相乗効果の方が大きいと言う。
「(井上)舞美は緊張でレース前にオロオロすることがあります。でも、滋賀の仲間を見つけると平常心を取り戻します。舞美にとって(福井)香澄と一緒のパラリンピックはすごく心強いと思います。逆に香澄は誰かの世話役になることで自分の活きるポジションが確保できる。それも精神的に落ち着くと思います。2人で行くパラリンピックは、本来の力を出すだけではなく、それ以上のパワーも出せるのではないかと期待しています」
取材の最後に東京2020パラリンピックに挑む2人に意気込みを聞いた。井上は「まずは自己ベストを出す。そして決勝に残ってメダルを取る」とはっきりした口調で答えた。次に福井は「自己ベストを更新し、チームにメダルをもたらしたい」と答えた。性格や選手の特性は異なるが、奇しくも目標は同じ。この夏、滋賀の名コンビから目が離せそうにない。