2019.07.19
[高校野球特集] 湖南農業・石部・信楽・甲南
連合チームの夏。
意識の差を埋めていく
6月15日。 小雨が降る中、湖南農業を訪ねた。 滋賀大会で唯一の連合チームを取材するために。 予定されていた試合は、前日の雨によるグランド悪化のため中止。 4校が揃う貴重な実戦の機会は、残念ながら校内練習に変わった。
それでも、連合チームにとっては4校が集まるだけでも大切な時間となる。少しでも気持ちを一つにしないといけないからだ。 湖南農業の鈴村多偉樹監督は言う。
「単独チームとして"夏1勝"を掲げてやってきた湖南農業と、ほか3校の選手には溝というか、意識の差のようなものがあった。 それを埋めるのが連合チームの難しい部分です。 歩み寄るためには、4校が揃う時間を多くする必要があります」
湖南農業、石部、信楽、甲南の4校のうち、湖南農業は夏の滋賀大会を単独チームで出る予定だった。 だが、部員8人と揃わず。 春に続いて夏も連合チームで戦いたいと申し出た。 そんな経緯もあって少し選手の間に溝が生じた。
部員7人の石部をまとめてきたキャプテン竹村直也(3年)は 「最初は意見が食い違った。 昨年7月から4校でやってきたけど、今年の夏は湖南農業が抜けると聞いていた。 でも、戻ってきた。 気持ち的に複雑なものがあった」 と打ち明ける。 それでも一緒に白球を追った。 その中で湖南農業のキャプテン髙島建樹(3年)は「打ち解けていった」 と話す。 そして 「みんなで夏1勝」 を目指すようになった。
野球ができるだけでうれしい
甲南の槇本純大(2年)と信楽の石本和偉(2年)は、ともに部員1人という同じ境遇で連合チームに参加している。 槇本は「昨年は先輩が3人いたけれど今年は僕1人。 平日はマネージャーに手伝ってもらい、捕球練習などをしています」と話す。
信楽の石本は 「普段は先生とマンツーマン。 先生が来られない時は1人。 寂しい時もあります」 と語る。 それでも、野球がしたい。 みんなの足を引っ張りたくないから練習を続ける。
選手を支えるマネージャーも大会に参加できることはうれしい。 石部の廣岡杏奈(3年)はこう話す。
「中学の頃に見た滋賀大会に憧れて、マネージャーになった。 1年生の時に連合チームで大会に出ると聞いた時は驚きました。でも、やってみると、単独チームにはない楽しさがありました」
4校合わせてマネージャーは5人。 ドリンクを作ったり、スコアを記したり、時には練習も手伝う。 甲南の脇麗奈(3年)は「単独チームでは他校の部員とコミュニケーションを取る機会はほとんどない。難しいけれど、選手が心を開いてくれた時の喜びは大きい」 と話す。
取材から10日後、滋賀大会の組み合わせ抽選会が行われた。 連合チームは1回戦(7月9日・彦根)で立命館守山と戦う。くじを引いた湖南農業の髙島は 「強い相手っすね」 と渋い表情をした後、「でも夏1勝、頑張ります」 と前を向いた。
湖南農業・石部・信楽・甲南
Profile/部員22人(湖南農業8人、石部7人、甲南1人、信楽1人、マネージャー5人)。県春季大会は1回戦で伝統校の八幡商業と対戦し、0-10(6回コールド)負け。夏の滋賀大会は1回戦で立命館守山と対戦。