2018.09.01
【SKETCH of 高校スポーツ】[特集Ⅰ] Make Miracle ~夏の奇跡~ ①
比叡山高校 [バドミントン部]
元五輪選手が新コーチに
インターハイ団体で過去6度の優勝を誇る比叡山高校バドミントン部。 だが、近年はなかなか勝てず。 今夏も2回戦で愛媛の新田に敗れ、大会を去った。 前キャプテン大谷璃輝(3年)は 「緊張して自分のプレーが出せなかった。 悔しいです」 と肩を落とした。
だが、すでに名門復活の狼煙は上がっている。 元日本代表の仲尾修一監督が約10年前から改革に乗り出し、今年4月から比叡山OBでリオ五輪日本代表の数野健太がコーチに就任。 この豪華な2人が練習相手になるという。
数野は 「リオ五輪の前から仲尾先生に誘われていた。いずれは滋賀に戻って指導者になりたいとも思っていた。 どうせなら、引退2年目で身体が動くうちに戻った方がいいと思って、母校にお世話になることにしました」 と、コーチ就任の経緯を説明する。
仲尾監督は数野コーチについてこう話す。 「私とは全くプレースタイルが違う。私は技巧派、数野コーチはパワー派。 世界で戦ってきた数野コーチのシャトルの速さを体感できるだけでも生徒は幸せだと思います」
時々、仲尾・数野ペアが練習相手になる時もある。 もちろん、部員たちは全く歯が立たない。 キャプテン山崎翔(2年)は「仲尾先生の戦術に憧れて比叡山に来た。そうしたら数野コーチまで来られて、ほんとにうれしかった。 たまに2人がペアを組んで対戦してもらえるけれど、全く勝てる気がしません(笑)」 と言う。
数野コーチは練習台になる目的をこう話す。 「最近は全国8強にも入れていない。 自分や仲尾先生を相手に球慣れすれば、底上げできるかな」。”世界”を体感できる環境が名門復活のカギとなる。
比叡山高校 [バドミントン部]
Team Profile/1974年創部。部員男子17人。選抜大会優勝6回、インターハイ優勝6回を誇る名門。
滋賀短期大学附属高校 [バドミントン部]
全国で戦える身体づくり
今夏、31回目のインターハイ(団体)出場を果たした滋賀短期大学附属高校バドミントン部。 昨夏から元国体選手の江藤仁顧問が着任し、今年4月から元比叡山の鈴木草麻生コーチを迎えるなど、改革が進んでいる。
大きく変化したのは、身体づくりを見直した点。 江藤顧問は 「私が来た時、みんな細いなぁと感じた。 聞くと、トレーニング系のメニューが少なかったので、それを増やした」 と話す。
ほぼ毎日、手押し車や坂道を使ったランニングなどで部員たちのベースアップを試みた。 だが、約1ヶ月が過ぎたあたりから故障者が続々と現れた。 「18人中10人くらいが、どこかに違和感があると言うようになった。 もう少し強度を下げないとダメかなと思い、少し長いスパンで身体づくりをするように切り替えました」(江藤)。 筋トレは週2回に。 ベンチプレスなどで上半身を中心に鍛え、下半身はランニングで強化する方向に変えた。 じわじわとその効果が出始めた頃、今年のインターハイを迎えた。
だが、結果は1回戦負け。 前キャプテン横矢麻衣(3年)は 「プレー的には負けていなかったと思う。 でも、雰囲気に飲まれ、気持ちで負けていた。 声も出ていなかった」 と反省する。
この苦い経験を次へつなげるため、新チームでは毎週、自分たちで目標を考えて、実行することにしたのだとキャプテン浅田香南(2年)は言う。 「インハイ後の目標は”声出し”。ホワイトボードに書いて、常にそれを意識できるようにしています。 目標は来年のインハイ・ベスト8です」
少しずつだが、着実に。 全国上位に向けたアプローチは始まっている。
滋賀短期大学附属高校 [バドミントン部]
Team Profile/1963年創部。部員男女11人。2000年に選抜大会で準優勝し、続くインターハイで優勝。