2021.06.29
草津市在住の国内トップ選手が、 “世界”をかけて“滋賀”を駆ける
〝下り〞の恐怖心はなかった
山道などの未舗装コースを走るトレイルランニング(以後、トレイル)は、岩場を登り、急斜面を下るといった難所が待ち構えている。舗装道を走るロードレースとは違い、一歩間違えば命を落とすリスクもある。かなり過酷なスポーツである。
だが、信越五岳トレイルランニングレース110㎞を2連覇している国内トップトレイルランナーの西村広和は「山頂の景色は素晴らしいですし、楽しいですよ」と、あっけらかんと話す。そして、ニッと白い歯を覗かせてこう続ける。「ロードでは敵わない選手にも、トレイルでなら勝てる。そこが面白いと
ろですね」
実際、優勝した2019年のIZUTRAIL Journeyでは、箱根駅伝や世界陸上を経験してきたロードの猛
者たちをぶっちぎっている。
「やっぱりロードとは違うテクニックが求められます。例えば、上体を反らして坂を下ると踵から着地するので滑ってしまいます。でも、上体を反らさずに走り下りるのはスピードも出るので怖いです。なので、まずその恐怖心を克服する必要があります。でも、私はもともと下りに対する恐怖心を感じなかった。トレイル向きだったのかもしれませんね(笑)」
滋賀から世界へ。挑戦はじまる
西村がトレイルをはじめたのは28歳の頃。職場の先輩に誘われ、軽い気持ちで始めたという。高校時代は帰宅部で、滋賀大学では写真部に所属。走るのは好きだったが、当時はまだ本格的に走っているわけではなかった。
「初レースは2010年7月のOSJ志賀高原トレイル50Kでした。その2年前に篠山ABCマラソン大会を
完走していましたが、トレイルの練習をしないまま参加したので、順位は100位台。ただただ苦しかった記憶があります」
だが、その3ヶ月後に出場したコロンビアウルトラトレイルマラソンin木島平で初優勝し、どっぷりと競技にハマることになる。
「参加18人の小さいレースでしたが、優勝の喜びを味わうことができました。トレイルが楽しいと思えた瞬間でした」
これを機に西村は競技に本腰を入れ、気がつけば国内トップ選手へと駆け上がっていた。現在の目標は今年11月にタイで開催される世界選手権に出場すること。5月22日の比叡山International rail Run50マイル(ロング)と6月13日のFAIRYTRAIL in Kutsuki (ショート)で〝世界切符〞の獲得を狙っている(大会は中止・延期の可能性あり)。
「昨年はコロナ禍で大会の中止が続き、今年4月に出場予定だった大会も無くなった。そういうモヤモヤしたものを吹き飛ばして代表の座を勝ち取りたい」
滋賀から世界へ。初の国際大会へ向けた西村の挑戦に注目したい。