2017.01.28

ECC学園高校 / 目方友一 / ショートトラック

鋭くインを抜く才能は左足の感性から生まれる。

「黄金の左足。」

転倒するんじゃないか。思わず目を覆ってしまいそうなほど、目方友一 (ECC学園3年)のコーナリングは 体が横になっている。しかも、普通は右足(外側)に体重を乗せて遠心力に耐えるところを、彼は左足(内側・写真 参照)でバランスをとっている。昔から彼を見てきた滋賀県スケート連盟の前田豊理事は「あんな曲芸、普通の人にはなかなかできない。ちょっと面白いでしょ」と笑って彼を評した。長い時間、左足に体重を乗せてコーナーを曲がるのは右足コーナリング よりも転倒のリスクが高い。ブレードの接地面積が狭いだけではなく、エッジが氷面に対してかなり鋭角になるからだ。とはいえ、右足よりも小さい円を描けるため、左足のコーナリングはクイックに曲がれる。実際のレースでは、鋭くインをついて相手を抜けるというメリットがある。タイムトライアルではなく着順で勝敗を決すショートトラックでは、4〜6人が一緒にコーナーへ入るケースが多い。その渋滞の中を、いかに相手のイン(内側)を突いて抜き去れるかが勝敗の分かれ目になる。サッカーの英雄ディエゴ・マラドーナではないが、ショートトラック競技における目方の左足はまさに〝黄金の左足〞だ。自分の持ち味について彼は話す。「コーナー出口で広がる選手が多い。 でも、自分の場合は左足に長く体重を乗せられるので、コーナー出口でもあまり広がらずに滑れます。風の抵 抗を受けにくい2〜3番手で滑り、最終ラップで一気に抜くのが自分のスタイルかなぁと思います」氷と接するスケートシューズのブレードは、一般的には選手ではなく職人が研ぐ。だが、目方は自分で研ぐという。彼の感性でしか分からないエッジ調整があるからだ。そんな異才は、4月からは関西大学へ進学し、さらに左足の感性を磨くつもりだ。「大学でもっと強くなって、全日本 選手権とかに出て、勝ちたいですね。できれば、オリンピックにも出たい」競技専念のために高校2年から通信制の学校に転校した若者は今、才能を大きく開花させようとしている。

目方友一

ECC学園高校

めかた・ゆういち。1998年5月8日生まれ、大津市出身。晴嵐小学校、京都産業大学附属中学・高校を経て、高校2年からスケートに専念するために通信制のECC学園に転校。週4回の氷上練習を行い、2015年度の国体では得意の500mで準々決勝へ進出。2016年12月のJOCジュニアオリンピックにも出場した。

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